Sudamericano Sub-20 Paraguay 2007 〜 U-20 南米選手権 2007〜 誤審連発に怒り爆発! 大荒れの一戦は白黒つかずエンパテ。
決勝リーグ 第2節 ブラジル 2-2 チリ
U-20 南米選手権 2007 は1月21日に決勝リーグの第2節が行われた。ルケのエスターディオ・フェリシアーノ・カセレスで行われた ブラジル×チリ は、2-2 の引き分けに終わった。だがスコア以上に取りざたされたのは試合の他に類を見ないその異様な内容。両軍合わせて17枚ものカードが飛び出し、挙げ句の果てには審判が突き倒されるなど荒れに荒れ、殺気すら漂う異様な試合になった。 試合は、前半の時間をチリが支配。前節に5点を奪って大勝したその勢いを見せつけてブラジルを相手にしてもひるむことなく果敢に立ち向かっていった。ブラジルのチャンスらしきチャンスが1度だったのに対してチリは前半だけで3度も決定機を演出。いずれもGKカッシオのファインセーブによって阻まれたが、チリは効率の良い攻めで優勝候補ブラジルを翻弄していた。両者の対決はグループリーグの第一節でも見られたが、このときはFWアレシャンドレ・パトの鮮やかなヒールシュートなどで4点を奪ってブラジルが大勝していたため、この日もブラジルの勝利を予想する人が大半を占めていた。だが、思わぬ展開に客席はあっけにとられていた。興味の矛先は、好調チリの攻撃陣の爆発に寄せられていった。 そして迎えた後半、試合は一変。急激に荒れ始めた。試合の主導権を握っていたチリは、58分にDFラロンドが2枚目のイエローカードで退場になったことで守勢を強いられた。3-5-2 は崩れて 4-3-2 の変則的な布陣に様変わり。すると、ブラジルがようやく息を吹き返した。69分、右サイドをえぐったDFアマラウの折り返しにFWアレシャンドレ・パトが頭で合わせて待望の先制点を奪取。ブラジルは押されながらにして人数でもスコアでも優位に立った。 だがその15分後に問題が発生。接触に憤慨したMFマルティネスとFWルイス・アドリアーノの2人が喧嘩両成敗で一発レッドを喰らい、退場処分となった。チリは2人目のセンターバックを失い、ブラジルは攻撃の柱のひとつを失うハメに。両軍ベンチからは主審に抗議の声があがったが、主審はそれらを無視して試合を続行した。ここから試合は徐々に荒れていく。 そして迎えた84分にチリが逆襲。右サイドから中に切れ込んだFWメディーナがペナルティエリアへ。身体を寄せにいったDFカルリーニョスはメディーナを倒してしまった。だが、このシーンはメディーナがわざと転んだシミュレーションであった。ブラジル側は「メディーナのプレイはシミュレーションだ」と主審に詰め寄ったが判定は覆らず、MFビダルのPKでチリが同点に追いついた。前半から何度か不可解な判定をとられていたブラジル代表のストレスは募る一方だったが、その直後の85分にDFアマラウが右サイドを崩しての折り返しをMFチョーが豪快に蹴り込んでブラジルが再び1点をリードした。 だがこの試合にはもう一波乱が待っていた。後半も90分を過ぎたロスタイム、チリは同点を狙って前のめりに攻めていく。そして93分、ペナルティエリア内でクリアしたMFフェルナンドの足がボールを蹴った際に相手選手の顔面の手前で高く上がったことを、アルベルト・ドゥアルテ主審が危険行為と一方的に断定。チリにPKを与えた。この判定にセレソンは激昂。怒りのおさまらないDFチアーゴ・エレーノは主審を突き倒して暴言を吐き、ピッチに背中をつけた状態の主審にレッドカードを突きつけられるという類を見ない光景まで生まれたのであった。一悶着二悶着の末95分にPKをMFビダルが沈め、ブラジルの決勝リーグ初勝利は夢と消えた。 前節アルゼンチンと引き分けていたブラジルは、この試合を勝つことしか考えていなかった。それもそのはず、相手はグループリーグの初戦で勝利を収めたチリだったからだ。だが、立ち上がりの時間ペースを相手に握られると後手を踏む展開になり、ブラジルが持ち直したのは後半になってからであった。しかし勝てなかった原因は何より主審の判定に尽きるであろう。この試合では危険行為でない場面でも幾度となくイエローカードが飛び交い、さらにファウルでないプレイをファウルとみなされ、主審の誤審によって2度もチリにPKを献上するハメになったのだ。 「誤審がなければ 2-0 でブラジルが勝っていた」。 激昂したのは選手のみならず、セレソンの応援にやってきたサポーターも同じだった。 試合終了後、カナリア色のユニフォームを着た選手数人が主審に激しく詰め寄るなど、場内は騒然とした空気に包まれた。さらに怒り冷めやらぬブラジルのサポーターはこの空気に便乗して、ピッチを退くアルベルト・ドゥアルテ主審めがけて小石や空き缶などを投げつけるなど暴徒化。同主審は盾を手にする警官に囲まれながら歩かなければ控え室に戻ることができなかった。 イエローカード12枚、レッドカードも5枚と荒れに荒れたこの試合。チリにとっても、ブラジルにとっても主力を使えない次節は厳しい戦いを強いられるであろう。試合後、CBF ( ブラジルサッカー連盟 ) はアルベルト・ドゥアルテ主審の誤審について 主催の CONMEBOL ( 南米サッカー連盟 ) に激しく抗議したと報じられている。
写真右上; 突き倒されたままレッドカードを取り出すアルベルト・ドゥアルテ主審のもとに詰め寄るブラジルの選手たち。
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