Primera Liga Argentina 2006/2007 Apertura 〜アルゼンチン1部リーグ〜 そしてシメオネは伝説になる。エストゥディアンテスが頂点に君臨!
前期 優勝決定戦 ボカ・ジュニオールス 1-2 エストゥディアンテス
アルゼンチン1部リーグは、12月13日に前期リーグの優勝決定戦が行われた。ブエノスアイレスのエスターディオ・ホセ・アマルフィターニ ( ベレス・サルスフィエールのホームスタジアム ) で行われた ボカ・ジュニオールス×エストゥディアンテス は、FWマリアーノ・パボーネのゴールで終盤に逆転したエストゥディアンテスが勝利をおさめた。一時は優勝の可能性が消えかけていたエストゥディアンテスは、シーズンをしぶとく戦い抜いた結果、ボカを蹴落として優勝という最高の栄誉を手にした。 試合は、1分も経たぬうちにMFパブロ・レデスマのシュートでボカが攻撃の口火を切ったが、エストゥディアンテスも3分にDFアグスティン・アラージェスがMFベロンのフリーキックに頭で合わせて反撃。序盤から攻め合いで幕を開けた。 明日はない。今日勝たなければ何の意味もない。そんな両者の優勝への意気込みは充分だった。その高い意識を最初に形にしたのは最終節まで首位の座を守ってきたボカ。5分、FWパレルモが、MFレデスマのクロスに反応するとマークについていた相手から逃げるようにしてフリーになり、右足でボールをゴールに押し込んだ。早い時間帯での先制点に詰めかけたボケンセは喜び荒れ狂った。 その後も一進一退の攻防が続いたが、繰り出されたシュートはいずれも相手の堅守に阻まれてゴールならず。お互いを削り合うラフプレイが続発すると、39分にはピッチ上で乱闘を起こしたMFパブロ・レデスマとDFパブロ・アルバレスが喧嘩両成敗で退場に処せられた。このジャッジは自ずとサポーター同士の乱闘も誘発。場内に緊張が張りつめたまま、前半が終了した。 ところが後半になると、試合の流れはエストゥディアンテスに傾いた。57分にFWギジェルモ・バロシュケロットがベンチに退くとMFレデスマの抜けたスペースを利用してボールをつなぎ、エストゥディアンテスが少しずつ自分たちのリズムをつかんでいく。そして65分、左に開いたMFホセ・ソーサが遠めから放ったシュートが見事にゴールネットに刺さり、エストゥディアンテスが同点に追いついた。 追いつかれたボカは反撃を模索したが、攻撃の組み立てに苦労。MFベロンやMFホセ・ソーサにボールを集めたエストゥディアンテスが徐々に主導権を握っていった。1-1 のまま試合は進み時計の針が80分を示したそのとき、試合が動いた。ロングパスが前線に抜けたところにGKボバディージャが飛び出すが、ボバディージャよりも先にボールに追いついたFWマリアーノ・パボーネがワントラップしてシュート。GKボバディージャの頭上を越えたボールは、ゴールマウスに吸い込まれた。 終盤に逆転を許したボカは82分にFWパラッシオがゴール前に飛び込み頭で合わせたがボールは枠外に逸れ、その後ボカは戦意を喪失。そして試合終了を告げるホイッスルが鳴り響き、エストゥディアンテスに優勝がもたらされた。 ボカ・ジュニオールスはこの前期リーグで開幕5連勝と上々のスタートを切ると、最終節まで首位の座を守り抜いてきた。リーベルとのエル・スーペルクラシコに敗れても首位を明け渡すことはなく、優勝へと突き進んでいた。ところが、優勝に王手をかけた第18節で格下ベルグラーノに思わぬ1敗を喫すると、ここを境にチームは失速。優勝を確信していたファンを裏切るかのように最終節でも敗れ、嫌な空気を断ち切れないままこの試合を迎えてしまったのであった。 この試合ではMFパブロ・レデスマの攻守に渡る活躍で前半こそ良い試合運びができていたが、そのレデスマが39分にレッドカードを喰らって攻撃のリズムが崩れてしまった。前半のシュート数が9本だったのに対して、レデスマを欠いた後半はわずかに2本。マイボールをフィニッシュで終われず、ましてやパスミスでゴールを献上しているようでは勝機など無きに等しい。 だが、ボカが優勝を逃したのはこの試合が主因ではない。第18節からの2試合で勝ち点を得られなかったことが、最たる要因である。ちなみに、第7節からアルフィオ・バシーレ ( 現アルゼンチン代表監督 ) に代わってラボルペ ( 元メキシコ代表監督 ) がボカの指揮官に就任したが、こうしたシーズン途中での監督交代劇も優勝を逃す一因になったと嘆く声も噴出。 「バシーレのままだったら余裕で優勝できていた」 一部のボケンセはラボルペ監督とクラブの首脳陣に対して皮肉を交えてこう述べたが、裏切られたサポーターにしてみれば当然の心理であろう。 一方、最高の形で前期リーグを締めくくることができたエストゥディアンテスにとっては、思い出深いシーズンとなったことだろう。今季より監督に就任したディエゴ・パブロ・シメオネ ( 元アルゼンチン代表MF ) は激しいプレッシングサッカーをモットーに堅実なチーム作りを推し進めた。リベルタドーレスではサンパウロの前に屈したが、国内では第8節以降無敗で勝ち点を積み上げ、首位のボカに絶えずプレッシャーをかけ続けてきた。そして最終節でボカに追いつき、プレイオフでも逆転勝ちで優勝に輝く偉業を成し遂げたのである。 最後に優勝した1983年から数えること23年。長い年月を経て久々に国内リーグの栄冠を手にしたエストゥディアンテス。この日を待ちわびていたサポーターの間では、「シメオネ」の名が伝説として語り継がれるであろうことは想像に難くない。
写真右上; 優勝が決まり、興奮してピッチになだれこんだサポーターと歓喜を分かち合うMFファン・セバスティアン・ベロン ( エストゥディアンテス ) 。
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