FIFA Copa do Mundo 2006 〜 ワールドカップ2006 ドイツ大会 〜 封印された"魔法"。セレソン、苦手フランスの牙城を崩せず敗退。
準々決勝 ブラジル 0-1 フランス
FIFAワールドカップは、7月1日に準々決勝の2試合が行われた。フランクフルトのワルド・シュタディオンで行われた ブラジル×フランス は、FWティエリ・アンリの決めた1点を守りきったフランスが勝利してベスト4に進出した。優勝候補筆頭のブラジルは、8年前に続きまたしてもフランスを相手に敗れ去ることになった。 試合は、立ち上がり早々ブラジルがセットプレイを得ると、この日スタメン出場のMFジュニーニョ・ペルナンブカーノの右足で先制の機会をうかがう。対するフランスはMFジダンを経由してボールをつなぐ戦術をとった。フランスは12分に前線を上げてゴール前に攻め込むと、フランスはMFホナウジーニョ・ガウーショが積極的にボールに絡んで攻撃参加。互いに相手の隙を狙う緊迫感が続いた。中盤でのボールの奪い合いがしばらく続き、迎えた44分。スルーパスに抜けたMFヴィエラが倒されて得たフリーキックをフランスは立て続けに2本蹴った。しかしどちらもカナリア色の壁に阻まれてゴールには結びつかなかった。 後半、立ち上がり早々フランスはセットプレイからMFヴィエラが頭で合わせるもボールは枠の外へ。ブラジルもコーナーキックなどでチャンスメイクするが、効果的に攻めていたのはフランスのほうだった。そして57分、ついに均衡が破られた。左サイドでフリーキックを得たフランスは、MFジダンの蹴ったボールがゴール前へ。競った選手全員の頭上を越えたボールがファーサイドへ流れたところにFWアンリが飛びこみ、右足のインサイドキックでゴールネットの上部へとボールを突き刺した。セットプレイの瞬間、ブラジル人の視界から消えて現れたアンリの頭脳プレイが生んだゴールだった。 FWホナウドの1トップで空回りを続けていたブラジルはFWアドリアーノを投入して2トップに変更。本来の 4-4-2 に形を戻して体勢を立て直した。しかし、それでも思うように相手の堅い守備包囲網を破るのに四苦八苦。しばしばフランスのカウンターを許した。なおも攻め続けたブラジルは、シシーニョ、ホビーニョを投入。総攻撃に出た。 88分にはゴール正面の絶好の位置でフリーキックを得たがホナウジーニョ・ガウーショのフリーキックは無情にも枠のわずか外へ。90分のFWホナウドのミドルシュートは、GKバルテズが弾き返す。時計の針の進捗とともに焦り続けるセレソン。後半ロスタイムにはオーバーラップしたDFシシーニョの速いクロスにMFゼ・ホベルトが飛びこむも、足にジャストミートできず逆サイドへボールが流れていった。そして、3分のロスタイムが経過してタイムアップ。勝利をおさめたのは、無敵艦隊スペインを破って勢いに乗っているフランスだった。優勝候補筆頭のブラジルのワールドカップ連覇の夢は、ここに潰えた。 ブラジルは、いつもとは違う布陣で試合に入った。カルロス・アウベルト・パヘイラ監督は自慢の"カルテット・マジコ ( 魔法のカルテット ) "を自らの手で封印。FWホナウドの1トップに、リーグ・アン ( フランス1部リーグ ) で活躍しフランス人選手の事情を熟知しているMFジュニーニョ・ペルナンブカーノ ( リヨン ) をスタメンに抜擢した。FWアドリアーノをスタメンからはずしたのだった。中盤に人を割いて攻めていく作戦をとったが、これがパヘイラの思惑通りにはいかなかった。前線のターゲットが少なかったせいか、相手守備陣が容易にマークしやすい布陣になっていたのである。選手たちは本来のリズムを出せず90分間もがき苦しんでいた。 追いつめられた終盤には攻撃的な選手を次々に投入するも、パヘイラは動きにキレの見られなかったホナウドだけは最後までベンチに追いやることはしなかった。ホナウドと心中するつもりだったのか。これまで戦ってきた相手の選手たちは皆、"ホナウド"というネームバリューに臆していた。だからこの大会でもホナウドはある程度通用してきた。彼の名前に臆することなく正面から立ち向かってくる強豪国にぶち当たったとき、ホナウドは「太め残り」による己の醜態をさらけ出してしまった。ホナウドは日本戦で復調したわけではなく、彼に臆する相手にだけ通用していたのだ。魔法のカルテットと呼ばれた4人は最後までピッチ上で共鳴することはなかった。そして、パヘイラはそこに最後まで気づかなかった。 セレソンの2006年はあっけなく終わった。4強にも食い込めなかった現実を、ブラジル国民は受け入れることができるのか…。まもなく、彼らはA級戦犯の"あら探し"を始めるだろう。
写真右上; 右に左に動き回ってボールに絡もうとしたDFカフー ( ブラジル ) だったが、周囲とは噛み合わないシーンもあった。
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