Campeonato Brasileiro 2006 〜ブラジル全国選手権〜 歓喜と失望と興奮。壮絶なゴールの応酬が生んだ 4-4 の引き分け。
第12節 グレーミオ 4-4 フルミネンセ
ブラジル全国選手権は、7月15〜16日に第12節が行われた。ポルト・アレグレのエスタジオ・オリンピコで行われた グレーミオ×フルミネンセ は、激しい点の取り合いの末 4-4 で引き分けた。終了間際のゴールラッシュに会場はどよめきに包まれた。 試合は、互いに少ないタッチでゴール前にボールを運ぶ効率的な攻撃の連続で幕を明ける。先制したのはグレーミオ。26分、左サイドに開いたFWハフィーニャのクロスをゴール前に飛びこんだMFハモンが頭で押し込んだ。1-0 とグレーミオのリードで迎えた後半はすさまじい展開になった。追加点を狙うグレーミオは立て続けに相手ゴールに襲いかかる。劣勢のフルミネンセもまたセットプレイやサイド攻撃で決定機をつくっていった。グレーミオの次のゴールが生まれたのは67分。自陣でインターセプトしたボールからカウンターになり、FWホムーロがフリーでボールを受け独走。スピードに乗ったまま右足でゴール右隅に蹴りこみ 2-0 とリードを広げた。スタンドに詰めかけたグレミスタは狂喜乱舞の大興奮状態に陥った。 ところがここからフルミネンセが怒濤の猛反撃に転じる。70分、右コーナーキックからのボールをGKガラットがファンブルすると、詰めていたFWエバンドがゴールに押し込み1点を返す。そして77分には、左コーナーキックをMFペトコヴィッチが鋭いカーブをかけて直接ゴールネットに突き刺して同点に追いついた。試合の流れは完全にフルミネンセに移っていた。80分には、右サイドからオーバーラップしていたDFマルセーロが左サイドからのクロスをダイビングヘッドでゴールマウスに押し込みついに逆転。フルミネンセはさらに87分にもMFペトコヴィッチが約28mの距離からミドルシュートを豪快に突き刺し、なんと 0-2 から 4-2 と形勢を大逆転させたのであった。 20分前とは一変して静まりかえるスタンドのグレミスタ。わずか17分間で喫した4失点に言葉を失い、ファンは敗戦を覚悟した。だが、試合はまだ終わらなかった。ロスタイムに突入した92分、グレーミオはMFエレーラがペナルティエリアの外側から低い弾道のシュートを決めて1点差に詰め寄ると、直後の93分にFWホムーロがゴール右隅にシュートを突き刺し、なんと同点に追いついたのである。息つく暇もなくゴールネットとスタンドが揺れ続けたこの試合は 4-4 のエンパテ。敗色濃厚の試合を引き分けに持ち込んだという意味では、グレーミオにとって価値のある引き分けであった。 グレーミオは、好調な攻撃と脆い守備を両方さらけだす90分を演出。2ゴール単位で動いた試合でかろうじて勝ち点1をもぎとった。わずか17分間で4点もとられた守備には多くの課題が残ったが、試合終了のホイッスルが鳴るまで諦めなかった攻撃陣には感嘆するばかりだ。いったい誰がこんな展開を予想したであろう。スタンドを埋め尽くしたグレミスタは、わずかな時間で歓喜と失望と興奮を味わわされた。ファンの中には引き分けで良しとする者と4失点に憤慨する者とが混在していたが、2点のビハインドを同点にした「諦めない気持ち」は素直に讃えたいと思う。 一方のフルミネンセは、勝利を目前に引き分け納得のいかない形で試合を終えなければならなかった。チームの核でもあるMFペトコヴィッチはこの日も冴えており、終盤の4点奪取の立役者にもなった。だが、後半ロスタイムのわずか3分をしのげず同点に追いつかれたのは受け入れがたいこと。試合後、オズワウド・ジ・オリベイラ監督は「ありえない展開。4点も奪っておいてロスタイムに追いつかれるなんて…こんな複雑な心境になった試合は、いまだかつてない」と語り、勝てたはずの試合で勝ち点2を取りこぼした点について言及していた。今節は上位のクラブが揃って勝ち点を取りこぼした日。奇しくも、フルミネンセもその一部に成り下がった。
写真右上; 80分にダイビングヘッドでチーム3点目を決めたDFマルセーロ ( フルミネンセ ) は満面の笑みを浮かべる。
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