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Campeonato Brasileiro 2005 〜ブラジル全国選手権〜

STJD の仰天判決! ブラジルサッカー界の“正義”と“真実”は何処にある?
ブラジルサッカー界の問題点と、 STJD のあり方を問う。

 2005年のブラジル全国選手権は、最終節を終えて数日が経過した。にもかかわらず、今季は優勝チームがどこなのかが未だ以て明確でないという異常事態にある。優勝はコリンチャンスか?それともインテルナシオナウか? 不明瞭な状況が解決していない中、ポルト・アレグレ ( ヒオ・グランジ・ド・スウ州 ) の STJD ( ブラジル最高スポーツ裁判所 ) が驚くべき判決を言い渡した。その中身は、コリンチャンスの優勝を認めないインテルナシオナウの主張が100%通ったものだった。ブラジルサッカー界の正義と真実は、いったい誰が握っているのか。

 今季のブラジル全国選手権がこのような事態に陥った原因は、言わずもがな八百長事件に端を発している。エジウソン・ペレイラ・ジ・カルバーリョ容疑者が主審として笛を吹いた全11試合に八百長の疑惑が浮上したことから、全試合が没収および再試合という処分になった。そして、その再試合で勝ち星を重ね「漁夫の利」を得た格好のコリンチャンスはその後首位独走態勢に突入。最後まで他の追随を許さず、首位の座を死守したのであった。
 その首位の座に最も近づいたのは、2位のインテルナシオナウ。その両者が直接あいまみえた第41節の試合中に起こった出来事が、問題に拍車をかけてしまった。GKファービオ・コスタ ( コリンチャンス ) と接触してペナルティエリア内で倒れたMFチンガ ( インテルナシオナウ ) に対して“シミュレーション”と判断した主審は、MFチンガにレッドカードを提示した。結果、試合はコリンチャンスに優位に働く引き分けで幕を閉じた。ところが、その試合直後に主審が問題のシーンについて「あれはPKだった」と発言。この誤審を認めたこともまた、今回の騒動の一因とする世論に結びついた。
 八百長や、先の誤審がなければ単独首位だったとする主張を崩さないインテルナシオナウはシーズン終了後、地元ポルト・アレグレの STJD に上告し、八百長事件再試合の無効やコリンチャンスの勝ち点剥奪を要求した。12月5日の出来事だった。

 その翌日、12月6日に CBF ( ブラジルサッカー連盟 ) が声明を発表。その内容は、首位に立つコリンチャンスの優勝を認めるものだった。しかし、CBF はこの騒動に関して厳密な調査などは一切行わず、一方的に声明を告示しただけにとどめた。そこには、混迷をきわめつつある一連の騒動にいち早く終止符を打ちたいとする CBF 側の身勝手な思惑が見え隠れしていた。
 とにもかくにも、ブラジルサッカー界を取り仕切る組織による公表で、事態は丸くおさまると思われた。

 ところが、その翌日にあたる12月7日のある出来事が、おさまりかけた事態を再び樹海の奥へと引き戻した。なんと、STJD がインテルナシオナウの上告を認める内容の判決を下したのである。その判決の内容は「八百長再試合の勝ち点を無効としてインテルナシオナウの優勝を認める」というものだった。また、同裁判所は、コリンチャンスの優勝を世間に公表せぬよう CBF に命令。違反すれば 400万レアル ( 日本円に換算して約2億2千万円 ) の罰金が科せられるというものだった。同裁判所の副所長ルイス・アントーニオ・ロペス氏は、 CBF に向けてこの判決内容を FAX で通達したことも合わせて公表した。

 しかし、CBF はその前日にコリンチャンスの優勝を公表し、さらにはブラジル全国選手権アウォーズも無事に終えたばかり。言うまでもなく CBF はこの判決に意義を唱えた。CBFは「我々よりも強い権限は、STJDにはない」と主張。だが STJD もまた「我々の判決をCBFが制御するようだと、STJDの存在意義がなくなる」と激しく反論している。
 コリンチャンスとインテルナシオナウの噛み合わない主張の論争は、いつのまにか連盟および司法までも巻き込む社会問題へと発展していた。


 通常、その国のサッカー界全体を仕切る役目を担っているのは、その国のサッカー連盟または協会である。しかし、サッカーにまつわる暴動や暴力行為が後を絶たないブラジルでは、連盟だけでは責任を負えないのが実態。そこで同国では、連盟では責任を負えないレベルを含めたあらゆる罪を裁く立場を新設。それが、STJD だった。両者は互いに協力し合ってブラジルサッカー界の正義を守っていく関係にあるはず。それが今、それぞれ異なるイニシアチブを有する両者が火花を散らしている。
 ブラジルサッカー界の“正義”と“真実”をコントロールすべきは誰なのか? 何が正しくて、何が間違っているのか? そして、2005年のブラジレイロンを制したクラブは、いったいどこなのか…。何もかもが、依然闇の中だ。

 写真; 今年2月、ピッチ内で粗悪な行為を犯したMFフェリッピ ( フルミネンセ / 元ブラジル代表 ) を裁いたのも、CBFではなく STJD だった。

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