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Copa TOYOTA Libertadores 2005 〜コッパ・リベルタドーレス〜

グラフィッチ、アルゼンチン人に根強く残る「人種差別」に遺憾の意を表明。
グループリーグ第3節 グループ3 キルメス 2-2 サンパウロ

 3月16日に行われたコッパ・リベルタドーレスのグループ3の第3節 キルメス×サンパウロ は、2-2で引き分けた。が、この試合が行われたエスターディオ・センテナーリオで、ある問題が発生。南米中に議論を巻き起こしている。

 それは、敵地に乗り込んだサンパウロが、1-1 で迎えた68分にFWグラフィッチのゴールで一時逆転に成功したときのことだった。チームメイトと抱き合って喜んでいたサンパウロの輪に向かって、スタンドから「黒い猿」という卑劣な罵声が飛んできたのである。ブラジル人が、ポルトガル語と非常に似通っているスペイン語を聞き取ることができたのが災いし、キルメスのサポーターの心無い一言にFWグラフィッチの心は深く傷ついた。

 試合終了後、グラフィッチは記者団に対して次のように述べている。

 「私がゴールを決めた瞬間、私のことを“黒い猿”と呼ぶ輩がいた。キルメスのサポーターが密集している場所からだ。黒人のいない土地柄だから仕方ないのかもしれないが、アルゼンチンに来るたびに不愉快な気分になる。アルヘンティーノはもう少し大人になれないのか?」

 しかも、この種の発言は、サポーターだけでなくキルメスの選手も試合中、グラフィッチに向かって同様の暴言を吐いた。これが火に油を注いだ形となり、グラフィッチのインタビューに直結したとも言われている。
 では、グラフィッチに暴言を吐いたキルメスの選手とは誰なのか。今年のキルメスには、DFネルソン・ビバスやMFマティアス・アルメイダなど、元アルゼンチン代表選手が加入。欧州など世界中でプレイした経験をもつベテランの彼らが差別発言するとは考えられないため、発言者はキルメスの若手DFというのがもっぱらの憶測である。

 ちなみに、グラフィッチが差別発言を受けたのは、この日に始まったことではなかった。昨年のリベルタドーレス「ロサーリオ・セントラル×サンパウロ」の試合中にも、ロサーリオのサポーターから同様の差別発言を受けたことがあったのだ。このとき、グラフィッチは激怒してアルゼンチンサッカー協会に謝罪を求めたが、今回は2度目とあってか、グラフィッチ本人も呆れ返っているという。

   「去年のロサーリオ戦はもっとひどかった。 “黒い猿!ゴールを決めてそんなに嬉しいならおかあちゃんに電話でもしとけ!もっとも猿だったら電話もできねぇけどな!” と罵ったヤツまでいたんだ。アルゼンチンは、サッカーでは先進国なのかもしれないが、アルゼンチン人の精神面はいまだに発展途上だ」

 リベルタドーレスとはスペイン語で「解放者」を意味する。この単語は、長きに渡り欧州系白人の植民地支配に苦しんでいた南米大陸の「植民地支配からの解放」という意味も含んでいる。そんな名称のついた大会で、このような人種差別が起こってしまうのは非常に嘆かわしいことだ。

 写真; MFマティアス・アルメイダ ( キルメス / 元アルゼンチン代表 / 写真上 ) と競り合うFWグラフィッチ ( 写真左 ) 。

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